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研究者の知見を資産に変える材料開発DX ― 成果創出に向けたフェーズ別AI活用の指針

January 05, 2026
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「MIはデータが整ってから」という先入観を払い、研究者の知見を最大化するための戦略的なロードマップを提示します。開発ライフサイクルの各段階(初期・中期・後期)に応じたAIの役割や、直感と予測を同期させる「二軸運用」の考え方をご紹介。単なる効率化にとどまらず、現場の知見を企業の知的財産へと変えていく、材料開発DXへの向き合い方をまとめています。

材料開発DX(データ駆動型研究開発)を支える技術的な要素として、これまで「予測モデル」「評価指標」「探索アルゴリズム」について解説してきました。これらの技術を理解し、実際にPoC(概念実証)やトライアルを終えた段階で、多くの研究者が共通の問いに直面します。
「今回のテーマはデータが揃っていたから解析できたが、新規プロジェクトでもAIは役に立つのか?」 「トライアルでの検証は終わった。では、実プロジェクトで成果を出し続けるにはどう運用すべきか?」
以前、本ブログでは「データが整っていないからMIはまだ早い、は本当か?」というテーマで、まずは基盤構築から始める重要性をお伝えしました。今回はそのさらに一歩先として、実プロジェクトのライフサイクル(初期・中期・後期)において、AIと研究者がどのように歩んでいくべきか、実践的なロードマップを提示します。

1. 私たちが大切にしている「3つのスタンス」

開発の状況やデータの多寡に関わらず、私たちが伴走の軸としている3つの視点があります。これらは単なる理想ではなく、現場で成果を出し続けるための「土台」です。
  • Data as Legacy(データは「資産」である):実験結果は研究者の知恵の結晶です。成功・失敗を問わず、全てのデータを「未来の研究者が活用すべき遺産」として蓄積し、企業の競争力を左右する知的財産へと昇華させます。
  • AI for Empowerment(AIは「武器」である):AIは研究者を代替するものではなく、その能力を拡張するための武器です。単に知見を裏付けるだけでなく、「人間の死角」にある新たな可能性を可視化し、研究者が確信を持って次の一手を打つためのパートナーとなります。
  • DX as Culture(DXは「文化」である):DXの真のゴールは、ツールを導入することではなく、「知見が循環する文化」を組織に定着させることです。属人化したベテランの暗黙知を形式知化し、次世代へ継承される仕組みを構築します。

2. 開発ライフサイクルに応じたAIの役割(3つのフェーズ)

AIの活用は、データが完全に蓄積された後の「仕上げ」だけではありません。開発の進展に合わせて、AIの役割を柔軟に切り替えていく捉え方が有効です。
※各フェーズの境界は、プロジェクトの総実験数や既存データの蓄積量に応じて相対的に変化します。

フェーズ1:立ち上がり期(方向性の策定と戦略的データ収集)

新規プロジェクトにおいて最も重要なのは、次に何をすべきかという指針を早期に確立することです。
  • DoE / BOによる探索の最適化:全くデータがない状態からは、実験計画法(DoE)やベイズ最適化(BO)を用い、最小限の試行回数で特性変化の「急所」を捉えます。
  • 初期モデルによる物理現象の把握:過去の類似データや、わずかな初期実験がある場合、この段階でメタデータモデルを構築します。「どの特性が効いているか」という物理的背景を早期に理解することで、開発の初速を最大化します。

フェーズ2:深化期(メカニズムの理解と知見の統合)

初期データが蓄積され、プロジェクトが本格化する中期では、AIは「理解を深め、確信を得るための分析器」となります。
  • 知見の統合と高度な解析:メタデータ(原料物性やプロセス条件)を活用し、複数のプロジェクト間を横断した知見を統合します。「なぜこの配合が良いのか」というメカニズムの解釈をSHAPなどの可視化技術で深め、研究者の直感を科学的に裏付けます。
  • 戦略的なデータ補強:モデルの「不確かさ」が高い領域を特定し、そこを重点的に埋める実験を行うことで、モデルの解像度を効率的に高めます。

フェーズ3:最適化期(限界特性への挑戦・仕様達成)

目標スペックが確定し、物理的な支配因子も明確になった後期では、AIは「精密なナビゲーター」へと役割をシフトします。
  • 多目的最適化によるトレードオフの解消:コストと品質、あるいは強度と耐熱性といった相反する複数の指標を同時に成立させる多目的最適化を実行します。全データを学習した高精度モデルを用い、シミュレーション空間で膨大な組み合わせを検証します。
  • 逆解析による「非自明な最適解」の探索:目標数値を入力するだけで、これまでの経験則や勘だけでは到達が困難だった高難度なスペックを達成するための、最適な配合提案を導き出します。

3. 成功の鍵を握る、研究者の知見とAIの「二軸運用」

実プロジェクトで成果を出し続ける鍵は、研究者の知見かAIかの二択ではなく、双方が補完し合う「二軸運用」の確立にあります。ここで重要になるのが、AIの結果が自分の知見(感覚)と乖離した際、それをどう捉えるかという視点です。
  • 知見に沿った結果は「確信」を与える 現場の仮説に基づき実験を行い、AIに物理現象を「教育」します。AIが知見を裏付ける結果を出したとき、それは研究者が確信を持ってスケールアップや製品化へ進むための科学的根拠となります。
  • 知見を裏切る結果は「新たな発見」を与える AIの結果に違和感があるとき、それは「データの偏り」か「人間の死角」のどちらかを示しています。SHAPなどの可視化技術を用いて「なぜAIはその判断をしたのか」という根拠を探ることで、熟練者が無意識に切り捨てていた本質的な因果関係に気づくきっかけとなります。
この循環を繰り返すことで、AIが研究者の直感を磨き、研究者の知見がAIの精度を高めていきます。

4. 最後に:DXは「最初の一歩」で決まる

材料開発DXの真の目的は、特定のプロジェクトで一時的な成功を収めることではなく、「知見が組織全体で循環し、常にアップデートされる開発文化」を定着させることにあります。
たとえデータが不完全であっても、フェーズ1からAIを「実験のガイド」として使い始めることで、次にどのデータを重点的に蓄積すべきかというロードマップを描くことは可能です。PoCでの検証を、組織全体の変革へと繋げる。Polymerizeは、その全てのプロセスにおいて、貴社の研究開発を強力にバックアップします。
Polymerizeからのメッセージ 私たちは、単なるツールのベンダーではありません。データが整っていない段階からの「基盤構築」から、AIを用いた「解析」、それから現場に定着させる「活用支援」までを一気通貫で担う、材料開発DXの総合パートナーです。
貴社の「今のデータ」から、どのような未来が描けるか。まずは共に、その可能性を探索するところから始めましょう。
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Masahiro Fujita

Technical Customer Success

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